【選書人すとう】読書感想ページ

本の紹介記事

愛するということ

読み返すたびに付箋が増える

愛するということ 新訳版 (紀伊國屋書店)
エーリッヒ・フロム
発売日 : 1991年3月25日
評価5

数年前TVで紹介されていたことから興味を持ち購入、3回目の通読。本書は「愛」とはなんぞや…という概念より「愛する行為」について語っている。

全編含蓄がある内容だが、読み返したタイミングで自分が関心のある項目がクローズアップされて頭に入ってくる。よって読み返すたびに付箋が増える。

今回は著者の言う、自己愛とナルシシズムについての部分に注意を惹かれた。メディアで「昨今の日本社会は不寛容」「不寛容なのは自己愛が強い人間が増えているせい」と表しているのを時折目にするせいか。

フロムの言う自己愛は、おそらく我々には「自己肯定感」と言った方が伝わりやすいものだろう。自分を愛さない者は他人も愛せない…というアレ。対してナルシシズムは、作中で利己主義や自己中心主義とも表現されている。こちらが近年メディアが言う日本社会に広まっているとされる感情だろう。

以下は本文から引用–「ナルシシズム傾向のつよい人は、自分の内に存在するものだけを現実として経験する。外界の現象はそれ自体では意味をもたず、自分にとって有益か危険かという観点からのみ経験される(P176)」……確かに不寛容かもしれない。

私の男

全編に倦怠感と不快感がつきまとっている

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)
私の男(文春文庫)
桜庭一樹
発売日 : 2010年4月9日
評価3

兄の本棚からなにげなく手に取った一冊。

結婚のための話し合いという、お目出たいシチュエーションでスタートするが、なにやら不穏な気配が目立つ。男女の歪に絡み合う描写が執拗で、それだけに全編に倦怠感と不快感がつきまとっている。

要するに、読んでいて「続きはどうなるんだろう」と気になったり、登場人物のやりとりにクスっとしたり、ワクワクした気持ちで読み進められる類いの物語ではない。

どんでん返しがある可能性が捨てきれないので最後まで読むのがポリシーだが、これは個人的にきつかった。心のどこかで「愉快」に感じている面が無いと続きを読もうという気が湧かないということがわかった。描写力は見事なので、こういうのが嫌でない人にはいいかも。