大人が楽しんでいることに、子どもは興味を持つ!
いつの時代も言われている「子どもの読書離れ」
ゲームや動画が手軽にスマホで楽しめる今の時代。スマホにかじりつきになっている子どもたちもめずらしくありません。今の子どもたちが本から離れてしまうのは仕方がないのでしょうか?
ちょっとだけ、みなさんも子どもの頃のことを思い出してみてください。
わたしの子どもの頃はちょうどゲームボーイなどが発売された頃。ゲーム全盛期でしたが、子どもがゲームをすることに大人たちはあまりいい顔をしませんでした。
「ゲーム欲しいって言ったら親から怒られそう」というマイナス思考と、「一人っ子で友人もいなくて一緒に遊んでくれる人が超少なかった」という逆境から、わたしは読書に行きつきましたが。
正直にいうと、ゲームのある家の子たちがうらやましくて仕方がありませんでした。もし一緒に遊ぶ友人や兄妹がいて、家にゲームがあるのが当たり前だったら、ゲーム好きになっていたと思います。
いつの時代も、子どもたちが心をひかれることはありました。「今の時代だからどうしようもない」ということはないと思います。
世代や時代をこえて、家族や友人と楽しめる共通の話題「児童文学」
では、子どもが誰に言われるともなく、自然と興味をもつのはどんなことでしょうか。
それは、周りにいる人が楽しそうにやっていることだと思います。たとえば、わたしが家にある本を読むようになった理由のひとつには、「大人の会話に入りたいなあ」という気持ちがありました。
子どもたちに本の楽しさを知ってもらいたい。そう思ったら、まずは家族で読書を楽しむのはいかがでしょうか。
子どもが大きくなってからも、家族みんなが読んだことのある本というのは、共通の話題として長く楽しめますよ。
今回は、おすすめの児童文学7選をご紹介します。対象年齢は4歳児以上~小学校高学年向けまでピックアップしました。ぜひ、ご家族で読書を楽しんでみて下さい!
心を育てるって何だろう? “教育” を考え直すきっかけになる一冊。
1.窓ぎわのトットちゃん 【小学生低~中学年から】
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窓ぎわのトットちゃん (講談社青い鳥文庫)
講談社
発売日 : 1991-06-15
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窓ぎわの席でトットちゃんはいつもそわそわ。授業中もなんのその、外を通りかかる人に平気で声をかけます。毎日先生を困らせた挙句、小学1年生にして退学に。転校先のトモエ学園はトットちゃんに負けず劣らず、変わった学校でした。とびきり愛おしい、トットちゃんのトモエ学園での日々が始まります――。
トモエ学園の校長先生は、初めて会ったトットちゃんの話を4時間も(おもしろがって)聞いてくれる人。生徒ひとりひとりと対等に接します。彼らは「怒られたくない」ではなく、校長先生との友情を「裏切りたくない」という想いで育っていきます。
「君は、ほんとうは、いい子なんだよ」校長先生がトットちゃんにかけたメッセージは、時代をこえて場所をこえて、多くの子どもたちとかつて子どもだった私たちに寄り添います。
前に進むのがこわいときは心にユーモアを。背中を押してくれる冒険物語。
2.エルマーのぼうけん 【小学校低学年から】
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エルマーのぼうけん (世界傑作童話シリーズ)
福音館書店
発売日 : 1963-07-15
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エルマー青年の夢は空を飛ぶこと。たまたま助けた老猫から、捕まっている竜を助けて仲間にしてはどうかと持ちかけられます。誰にも内緒でたったひとり、遠く離れた島へ竜を助けに行くことに決めたエルマー。キャンディーやらチューインガムやら、リュックに満杯につめこみ、さあ出発!
エルマーは仲間を助けるために、ピンチになっても機転を利かせて切り抜けます。柔軟な発想力とかわいい挿絵に思わずにっこり。エルマーを食べようとするライオンやワニたちもどこか憎めません。
ハメを外して、思いっきり大声でへんな歌を歌いたいとき!
3.チョコレート工場の秘密 【小学校中学年から】
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チョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2)
評論社
発売日 : 2005-04-30
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大きなチョコレート工場がある街に住んでいる主人公のチャーリー。彼の家は貧乏で、年に一度しかチョコレートを買えません。しかし、世界にたった5枚しかない当たりのチョコレート――工場見学ができる黄金の招待チケット――がなんと彼の手に。とびきりの “おかしさ” に満ちた工場見学へ!
チョコレートの滝、フルコースのチューインガム、チョコレートが移動するテレビ。知的好奇心や想像力を刺激するお菓子がいっぱい出てきます。
ロアルド・ダールの作品はどれも、テンポのいい歌やおかしいフレーズが魅力的。独特の「ことばのリズム」を通して、イギリスのユーモアたっぷりの世界を味わってください。
ケンカをした友達と、仲直りをしよう。先にごめんなさい、と言おう。
4.あらしのよるに 【4歳児から】
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大型版 あらしのよるにシリーズ(1) あらしのよるに
講談社
発売日 : 2000-06-29
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ひどいあらしの夜に、いっぴきのヤギとオオカミが出会います。ひとつ屋根の下、お互いの正体に気づきそうで気づきません。すっかり仲の良くなったふたり。「あらしのよるに」を合言葉にして、また会いましょうと約束をして別れるのですが――。
本シリーズは7巻で完結します。ヤギとオオカミという立場をこえて、ふたりは互いを「ともだち」だと信じ抜きます。もし自分がヤギだったら? オオカミだったら? 思わず考えずにはいられません。対象年齢はひらがなが読めるようになってから大人まで、幅広い年代に語りかける絵本です。
猫だって勉強するんだ。猫を知りたいときの、最初の一歩。
5.ルドルフとイッパイアッテナ 【小学校低学年から】
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ルドルフとイッパイアッテナ
講談社
発売日 : 1987-05-20
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ルドルフという小さな黒猫が語り手です。彼は岐阜で飼い猫として暮らしていましたが、長距離トラックに紛れ込んで東京に来てしまいます。東京で出会ったノラ猫の「イッパイアッテナ」から、猫として必要な「キョウヨウ(教養)」を学ぶことに。東京でルドルフは日に日に成長していきます――。
あどけない子猫と熟練ノラ猫のイッパイアッテナのコンビは、どこかずれています。たとえば、ルドルフが名前をたずねたときの返事が「俺の名前はいっぱいあってな」。ルドルフはそれを「イッパイアッテナ」という名前だと勘違い。わたしの本好きのきっかけになった一冊です。
強くなるのは、弱くて小さな大事なものを守るため。
6.だれも知らない小さな国 【小学生高学年から】
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だれも知らない小さな国―コロボックル物語 1 (講談社青い鳥文庫 18-1)
講談社
発売日 : 1980-11-10
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主人公が小学3年生のときに偶然みつけた山奥のある場所。そこには「こぼしさま」と呼ばれる小人が人間に見つからないよう、こっそりと住んでいました。子どもの頃、その場所で小人を見かけた主人公は、大人になってから再びそこに戻ってきます。
小人たちを守るため、小人たちの国を作ろうと懸命になる主人公。小人たちと交流を深める姿を見ていると、小人たちが「小さい」ことは欠点ではなく、武器なのだと気づかされます。世界一小さな国の行末はどうなるのでしょうか。弱き者を守るための強さであってほしいと願いたくなる作品です。
物語でも現実は甘くない。だからこそ面白い。
7.ダレン・シャン 【小学生高学年から】
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ダレン・シャン1 奇怪なサーカス
小学館
発売日 : 2001-06-14
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主人公はダレン・シャンという蜘蛛好きの少年。ある日、巡回サーカスで芸達者な蜘蛛を見かけます。蜘蛛がどうしても欲しくなったダレンは思わず盗み出してしまいます。蜘蛛の持ち主は吸血鬼。蜘蛛に刺された友達が瀕死という大ピンチのダレンに、助けてやるから吸血鬼になれと迫ります――。
禁止されるほど、やってみたくなる。子どもが持つ好奇心を満たしてくれる作品。現実は物語のように甘くはないと語る主人公。「関わってはいけない」世界に足を踏み入れてしまった、後悔の日々が語られています。およそ物語らしくない、目を覆いたくなるような展開から目が離せません。
年齢に関係なく、ゆたかな感性で楽しめるのが「児童文学」の魅力
好きな作品や読みたくなった作品はありましたか? 児童文学とひとことで言っても、それぞれの作品ごとの特色があり、それぞれに著者の想いが込められています。
感受性のゆたかな子どもの時期はもちろん、大人になってから読むと、子どもの頃の感性を思い出すこともできます。大人も子どもも楽しめる児童文学。今日だけは思いきり子どもの頃に戻った気分で、楽しんでみてはいかがでしょうか。